「エシカル」の考え方を広め、消費者の手によって確かな市民社会を築いていくためには、学びの場が必要です。具体的には、学校の授業や特別活動、地域の生涯学習プログラムやNPO等の市民団体のイベント、家庭で買い物に行く場面や日常会話の中、職場のCSRにかかわる研修等、あらゆる場面が想定できます。対象については、特に高校生や大学生などの若年層が意欲的に取り組む傾向が見られますが、誰にとっても魅力的なテーマとなりえるでしょう。
学びの手法
その場合、学びの手法として、一方的な情報提供(啓発)ではなく、参加者がその問題について自らの消費生活の場面を振り返り、さらに次への行動に結びつけられる実践的な学びにすることがポイントです。第1回でもお伝えしたように、エシカルを「地球全体の諸課題を、一人ひとりが消費行動を通じて解決に導いていこうとする動き」と考えれば、その学習方法も自ずと能動的なものになってくるでしょう。①課題を提示し(あるいは自らで課題を見つけ)、②「課題解決のために私たちに何ができるだろうか」についての調査や話し合いを行い、③できることを行動に移す、といった課題解決型学習の流れが出来てきます。
このような学習は、一人で黙々と暗記をしたり、考えたりというスタイルではなく、グループになって話し合い、他のグループと意見交換する、いわゆる「ワークショップ形式」にすると効果的です。学習形式としても効果的なのですが、エシカルの考え方を具体化していくときに、様々なアイディアや人や組織、地域や国などがつながり、ともに連携・協働していくことが不可欠であることを学習形式として学んでいる、というわけなのです。
課題の発見にはリアルな教材を
このような学びで、特に課題の発見時に使用する教材としては、実物、写真、動画(映画)、体験談など「リアル」であるほど効果的だと思います。なぜなら、私たちの消費生活は日々リアルに行われている行為ですが、それがあえて切り取られることで、自分事として問題に深く迫ることができるからです。もちろんその提示方法についても、工夫が必要であることは言うまでもありません。
教材の具体例
昨年、私たちは中高生対象のリーフレット「エシカルアクションガイドブック 私たちの行動が未来をつくる‐めざせ!消費者市民‐」を作成しました。表紙には、高校生の男女がショッピングしている様子が描かれており、彼らが持っているスマホ、洋服、チョコレートがどのように作られているのか、生産現場の写真と関連づけるクイズが次のページに続きます。さらに、この問題を知った後に考えられるアクションの具体例を配置し、裏表紙には企業に手紙を書くためのワークが掲載されています。このように、①クイズによって課題を見つけ、②自分だったら何ができるか考え、③行動を起こすという一連の流れをコンパクトに8枚のリーフレットの中に織り込んでいる教材です。

このほかに最近では映画「ザ・トゥルー・コスト‐ファストファッション真の代償」がファッションの裏側にある問題点に鋭く迫った力作として、全国各地で映画上映会が開かれています。このような映画の上映会のあとに、参加者で意見交換するというスタイルも、エシカルにふさわしい学びのスタイルではないかと思います。
肩ひじを張らずに、できることを少しずつ。あなたは、何から始めてみますか?