特集コラム

消費者教育実践のポイント

第2回「これまでの教育課題を『消費者』の視点から振り返ろう」

(1)学校現場の反応は?

学校現場で子ども達に向き合っている先生方とお話をすると、重要性は分かるが「消費者教育」という課題を新たに取り入れるのは難しい、という声をよく耳にします。また現場の先生以上に、教育委員会の先生方と消費者教育の推進についてお話をしていると、「教員の多忙感」という現実を前に、消費者教育推進に対しての「壁」を感じてしまうことも多いのが実情です。

ですが、大変興味深いことに、現場や教育委員会の先生方とお付き合いを続けていくと、一定の期間を経て、消費者教育と向き合う「コツ」のようなものを習得されていると感じます。はじめは、得体のしれない「消費者教育」という新たな課題を、多忙を極める先生方が取り組むことは難しいという感想をもっていても、子ども達とコミュニケ―ションを深める「題材の宝庫」である消費者教育を上手に取り入れて、子ども達の「生きる力」を育むことに寄与する、という前向きな意識変化が見て取れるのです。

(2)消費者教育の捉えなおし

「消費者教育は取り組んでいませんが、環境教育には熱心に取り組んでいます」という学校現場の声をよく耳にします。このような考え方の背景には、消費者教育の目標を「消費者市民社会の構築」ではなく、「悪質商法の被害防止」と捉えていることが多いように感じます。

環境教育に限らず、○○教育という数は相当数あり、学校現場が求められる教育課題をすべて受け入れることは難しい、というのは当然のことです。しかし考え方を少し変えて、これまでの教育課題を「消費者、消費生活の視点で見直す」ことで、意識していなかった取組が消費者教育になると考えてはどうでしょうか。

例えば、環境教育との関連では、持続可能な社会を構築するために、消費者が買い物、使用、廃棄の場面でどのような行動をとったらよいかについて考えることは、まさに消費者教育と言えるでしょう。これまでもグリーンコンシューマー食品ロスという捉え方で、様々な取組が行われています。また、食育でしたら地産地消、国際理解教育でしたらフェアトレードも、消費者教育として効果的な題材となるでしょう。

この点については、平成24年12月に施行された「消費者教育の推進に関する法律」の基本理念(第3条)においても「環境教育、食育、国際理解教育その他の消費生活に関連する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされなければならない」と示されています。これからの消費者教育は、このような観点から様々な教育課題との関連で幅広く行うことが重要になります。

(3)消費者教育体系イメージマップを活用しよう

これまでの教育課題を消費者の視点から振り返るために活用できるのが、「消費者教育体系イメージマップ」です。現在、普及しているものは平成25年1月に消費者庁から出されたものですが、静岡県ではこれを参考に県の独自の目標を二つ追加設定し、「静岡県版消費者教育体系イメージマップ」を作成しています。

学校現場ではこの消費者教育体系イメージマップを活用して、これまでの教育活動から関連した取組を振り返ることができます。それにより、これまでは意識していなかった取組が、実は消費者教育であったことに気づくこともあるでしょう。

学校単位でこれらの取組を掘り起し、そして、教科や学年別につながっていくことにより、消費者教育は点としてではなく、面としての広がりが期待できます。子ども達が現代の消費社会を消費者市民として「生きる力」を身に付けるために各発達段階で何が必要なのか、この消費者教育体系イメージマップを参考にして振り返ることが重要です。