食品ロスとは
食品ロスの現状
日本の食料自給率はカロリーベースで約4割といわれており、多くの食品を輸入に頼っています。それにも関わらず、農林水産省の平成24年度の推計によれば、年間2801万トンもの食品廃棄物を排出しており、そのうちまだ食べられるのに処分されてしまう、いわゆる「食品ロス」は642万トンにも上ります。この量は食用の魚介類の量(年間622万トン)に相当します。
食品ロスの約半分は一般家庭から出されており、家庭での一人当たりの食品ロスの量は年間24.6kgとなります。一般家庭においても、一年間で一人164杯分のごはんを「まだ食べられるのに」処分していることになります。
食料が生産され、食卓にのぼるまで、加工・配送・販売等、さまざまなプロセスをふむことになります。食料を処分するということは、食料そのものだけでなく、そのプロセスに費やされた資源や労力まで無駄にすることになり、さらに別の資源や労力をかけて処分をするという、非常に「もったいない」事態が起こっているのです。
なぜ食品ロスが起こるのか
食品メーカーなどでは、商品表示の印字ミスや、配送中に外の箱がつぶれたり、へこんだりした食品、欠品を出さないように過剰生産された食品、定番カット商品や季節商品でシーズンが過ぎてしまった食品などは、まだ食べられるにも関わらず、売ることができずに処分されてしまいます。
また、多くの食品が、「3分の1ルール」という商習慣によって、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、その3分の1までを卸売や小売店などへの納品期限、店頭で販売ができる販売期限をその3分の2までと設定されており、この期限が過ぎてしまうと、やはり売ることができなくなり、賞味期限前であっても処分されてしまいます。この商習慣は食品ロスの一因となっているとして、見直しが検討されています。

このように食品が処分されてしまう理由として、もちろん食品メーカーのブランド力の維持のためといった事情もありますが、過剰な鮮度を求めてきた私たち消費者の意識に応えてきた結果とも考えられ、私たち消費者の意識の改革も食品ロス削減には欠かせないこととなります。
そして、私たちの家庭においても食べ残し等の理由で食品ロスが起こります。また、買い過ぎにより、手つかずのまま直接処分されてしまう食品も多く、農林水産省の統計によると、そのうちの4分の1が賞味期限前であるようです。
食品ロスへの取り組み
現在、食品ロスの削減のため、賞味期限の延長や年月表示、「3分の1ルール」の見直し、消費者への啓蒙、ドギーバックなど、さまざまな取り組みが行われています。次のコーナーでは、その取り組みの一つとして、私たちの活動内容でもあるフードバンク活動について説明します。
フードバンク活動とは
フードバンク活動とは
フードバンク活動とは、まだ安全に食べられるにも関わらず、やむを得ず処分されてしまう食料を、企業や個人から無償で寄贈を受け、生活困窮者や福祉分野の施設や団体など、食料を必要としている人に無償で提供する活動です。

この活動は1960年代にアメリカで誕生し、日本では2002年から始められました。現在では40ほどのフードバンクが日本全国で活動をしています。
フードバンク活動により、食品ロスの削減と生活困窮者支援という2つの社会課題への効果が期待できます。
静岡でのフードバンク
静岡でのフードバンクは、2012年度に生活困窮者支援団体であるNPO法人POPOLOが、富士市を中心に活動を開始しました。
その後、静岡県全域で活動するフードバンク団体を作るべく、静岡県労働者福祉協議会の呼びかけにより、静岡県生活協同組合連合会や静岡県労働者福祉基金協会、連合静岡やPOPOLOなど10を超える団体が参画し、2014年にNPO法人フードバンクふじのくにが設立されました。
フードバンクふじのくにの食品提供システム
フードバンク活動は、食料の寄贈を受ける、食料を安全に管理する、食料を適正に提供する、という大きく分けて3つの工程に分類できます。

(1)食料の寄贈を受ける
まだ安全に食べられるのに処分されてしまう食料を企業や個人から寄贈を受けます。現在、約60社の企業と協定を結び、食料の寄贈を受けています。
米、スパゲティ、缶詰、レトルト食品、飲料、防災備蓄品等、常温で保存がきく食料を取り扱っています。
(2)食料を安全に管理する
寄贈された食料を、安全に生活困窮者等に提供し、無駄にしないため、賞味期限別に分類し、管理します。皆様の善意でいただいている食料なので、万が一にも事故が起こらないよう、食品チェックを行っています。
(3)食料を適正に提供する
食料は主に行政や社会福祉協議会等を通じて、生活困窮者家庭に提供されています。専用の依頼書に記入していただき、世帯人数やライフラインの有無、アレルギーなど相談者の状況を確認し、確実に口に入れることのできる食料を提供し、必ず明細書を交付するようにしています。
次のコーナーではフードバンクふじのくにの活動の現状を紹介します。

フードバンクふじのくにの活動
どのように食料を集めているのか
フードバンクふじのくにの設立から2年間(2015年度は2016年2月まで)の食料寄贈の受付に関する実績は、以下のとおりです。
年度 | 寄贈件数 | 食料入庫量 |
---|---|---|
2014 | 310件 | 20t |
2015 | 508件 | 41t |
(1)企業から集める
現在、地元企業を中心に、約60社より食料をいただいています。
生活協同組合ユーコープからの定期的な支援、静岡缶詰協会の構成団体からの寄贈、その他食品企業からの寄贈の他、一般企業や行政から、防災備蓄品の寄贈も受けています。
また、ある食品企業の担当の方が「食品というものは人の口に入ってこそ食品である、という思いで我々は生産している。飼料や燃料として使うよりも、食品として使ってもらえるのはありがたい」と仰っていましたが、寄贈する側にとっても、従業員のモチベーションの維持や、処分コストの削減などといった面で、メリットのある事業になります。
(2)個人から集める(フードドライブ)
フードバンクふじのくにでは、毎年1月と8月に、協力団体の事務所や施設に食品回収BOXを設置させていただき、一般家庭からの食料寄付を募っています。この寄付キャンペーンをフードドライブといいます。
多様化するニーズに応えるため、多種多様な食料を集める必要がありますが、まだまだ、食品企業との連携が足りていない状況です。お中元やお歳暮で、個人宅に食料が集まりやすい時期に、寄付を呼び掛けています。また、フードドライブを行うことで、フードバンク活動の周知やボランティア意識の向上といった効果も期待できます。
直近では2016年1月にフードドライブを行ったところ、県内78ヶ所で、5トンを超える食料を集めることができました。
定期開催のフードドライブとは別に、しずてつストア、スーパー富士屋の一部店舗、地区労福協の一部事務所、湖西市役所、島田市役所では食品回収BOXを常設しています。
常温保存がきき、未開封で賞味期限が1ヵ月程度残っている食品であれば受付できますので、食品回収BOXを見かけましたらぜひご協力ください。


どのような人が利用しているのか
フードバンクふじのくにの設立から2年間(2015年度は2016年2月まで)の食料提供に関する実績は、以下のとおりです。
年度 | 依頼件数 | 食料提供量 |
---|---|---|
2014 | 414件 | 18t |
2015 | 1,288件 | 35t |
依頼件数はこの2014年度に比べて3倍増という数値となっていますが、これはフードバンクの認知度が上がったということと、生活保護に至る可能性のある人への自立支援を目的として、2015年4月より施行された「生活困窮者自立支援法」により、各自治体に自立支援の窓口ができ、今までなかなか相談に行けずに我慢していた人が、ある程度相談に行きやすくなったからだと思われます。
失業してしまったが何とかしようと再就職に向かっている人が、債務を抱え所持金もなく日々の生活に困窮し、自立支援の窓口へ相談に行きます。自立支援の窓口から私たちに依頼が来て、食料の提供をすることになりますが、それだけではすべての問題の解決にはなりません。自立支援の窓口の相談員が、相談者に寄り添って就労支援や専門機関への繋ぎといった支援をし、その間の生活のための繋ぎとして、フードバンクを利用する、というのが典型的な利用例になります。残念ながら私たちだけではすべてを解決することはできませんので、行政や社会福祉協議会と連携し、「チーム」で生活困窮者支援を行っているのです。現在、静岡県の全35市町のうち、34市町の自立支援の窓口に対し、食料支援を行っています。
利用者の傾向として、活動開始当初は、単身・高齢者からの依頼が多かったものの、最近では20代~30代で、まだまだ小さいお子さんをお持ちの人からの依頼も来るようになり、「子どもの貧困」という問題がいよいよ身近に迫っているということを実感させられます。ミルクやベビーフード、お菓子などを希望される依頼も増え、多様化するニーズに応えていく必要があります。
また、災害時の食料支援も行っています。2015年10月に発生した静岡市清水区の水害の際には静岡市災害ボランティア本部に570kg、2016年9月に発生した茨城県・栃木県の水害の際には静岡県ボランティア協会を通じ茨城NPOセンター・コモンズに900kgの支援を行いました。
今後について
私たちは食品ロスの削減と生活困窮者支援のため、このフードバンク活動を継続して行い、地域の仕組みとして定着させるため、今まで以上に行政や社会福祉協議会、企業と連携していきます。
また、いろいろな形でフードバンク活動を周知することで、活動の輪を拡げていきたいと考えています。少しでも興味をお持ちの方は、下記までご連絡いただくか、事務所までお越しいただければ幸いです。
食品寄贈、活動費の寄付、ボランティアは随時募集中です。皆様のご協力をお願いいたします。


事務所所在地: | 〒420-0868 静岡市葵区宮ヶ崎町53番地(浅間神社のすぐ近くになります!!) |
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TEL: | 054-248-6177 |
FAX: | 054-248-6178 |
ホームページ: | http://fb-fujinokuni.org/ |